「さて…。互いによろしくと言ったところで━━━━━。」 エアリーが、顔をあげて大聖とバイメンの方を向く。 「結局、海の世界にはどうやって入ればいいのかしら?」 すぐに、本題に戻った。 『とびこみ』 「━━━━━おぉ、そうじゃそうじゃ。お前さん達、そんなことを言うとったのぅ。」 「………。」 …キリがいいと思ったのか、エアリーが唐突にそのことを話した。 それを聞いた大聖がポカンとし、バイメンが思い出したように笑った。 今川沿いを歩き続けているのは、その海に向かうため。 とはいっても、海の目の前までは行くことが出来ても、海の中に入る術は…2人にはない。 その件で2人が困っている中、バイメンはにへらを笑ってこんなことを話す。 「うむ。陸の者が海の世界に飛び込む。それは至難なことじゃ。  もともと、陸の者と海の者との出会いは、本来はあり得んことじゃからの。」 「有り得ないこと?」 「そうじゃ。陸と海では、世界が大きく異なるんじゃ。」 「…確かに、猫と海豚は人の手を借りずして、まず会えたものではないな。」 両腕を組んで頷きながら話すバイメンに、エアリーと大聖もキョトンとした様子で話した。 バイメンの言うことに大聖が同感という様子で言うものの ………それで一体どうすれば、という話に戻る。 すると、バイメンが更に妙なことを話し出した。 「何、心配いらんわい。お前さん達は海に行くことを望んでおるんじゃ。  じゃったら、話が早いわい。…ちょうどわしもお前さん達に、  海の世界に赴いてほしいと考えておったからの。」 「………え?バイメン、それってどういうこと?」 「うむ。実はのう…、海の方でも何やら物騒なことが起こっとるようなんじゃ。  じゃから、その…わしに変わって海の様子を見に行ってほしいんじゃよ。」 「海でも、何かの騒動があるとでも言うのか?」 「いや…、詳しいことは知らんが、どちらかといえば、そうじゃ…。  …これから起ころうとしておる、と言ったところか。」 急に用事を頼み込むように言うと、エアリーが少し困った顔をして聞く。 それを聞き、バイメンが2人の前に現れた真の目的を話すと、大聖がハッと反応を示した。 騒動を見て見ぬふりをするわけがない、大聖の予想通りの反応には、 バイメンもキリッと表情を変えて説明する。 「…海の中に入れぬことは、わしの神さんの力でなんとかする。」 「…海に入らしてくれるの?でも…、どうやって?」 「わしは仮にも神さんじゃ!魔法や術を使えば、ちょちょいのちょいじゃよ!」 「………なんか、軽いな………。それで本当に入れるのか?」 「これ、大聖!お前さんがわしを疑ってどうする!  もしわしにそれらが使えなかったなら、金斗雲の術はなかったぞ!」 「………金斗雲?」 乗り気のバイメンを見て、大聖を眉を寄せ、目を細めて言うと、 バイメンは困った様子で怒った。 …その中に、大聖が扱う術の1つ、金斗雲の名を出せば、エアリーが「…ん?」と首を傾げる。 …金斗雲といえば、神話時代から存在する猿神が使用するという術だ。 これに乗っては、猿神は遠方までひとっ飛びで向かうことが出来る。 ただ、これは乗る術者は勿論のこと、相手を選ぶ術であり、 心が歪んでいる者や邪悪な者は、乗ることが出来ないという…。 それを使える大聖は………。 「(…もしかして、神話の本とかに乗ってる『孫大聖』っていうのは、   本当に…大聖のことなのかしら?)」 今は人前に現れることのない、架空の存在として伝えられている神。 それであるバイメンが目の前にいるなら、あながち大聖も間違ってはいないかもしれない。 神は、人前に現れてはならないと言っていた。 おそらく、大聖が人々のいる街中で行くのに乗り気でなかったのは、そのため…。 少しギョッとしてから、エアリーは密かに大聖の方を見た。 「お前さん達、…浜辺か港か海が近くにある場所ならどこでもいい。  とりあえずは…、そこへ向かってくれんかのう。  この場ですぐに使うと、海に入るまでに術が切れてしまうからのう。」 「術の効果は、永久に持続はしないのね?」 「そうじゃ。時間経過で消えてしまう。」 「わかった。ならそこで待ち合わせするとしよう。老師様は、どうする?」 「そうじゃのう…。わしは先に海の方へ向かうことにしよう。  なんだか…、深海の奥から何かが湧き出とるようじゃ。  それを、時間稼ぎかもしれんが押さえに行く。」 「深海…?」 「海の中でも最も暗い場所じゃ。…ま、今の段階では無理に入る必要もあるまい。」 海に向かう。それが一致したところで、バイメンはそう伝えた。 …つい先程、自分の道を歩けと言ったばかりではないか。 しかし、海でも倭国同様に騒動が起ころうとしているのなら、 それが起こる前に止めにいくべきであろう。 …深海の奥から湧き出ている何かを止めるため。 そう言えば、海の住民になぜ来たのかを問われても、理由としては答えられる。 大聖は、バイメンの妙な矛盾を黙って聞き流す。 「よし、じゃあわしは先に行っておる。  ここから海まではかなりの距離があるが、ゆっくりで構わん。」 「わかった。バイメン、ありがとう!」 「うむ、健闘を祈るぞ!」 『━━━━━ヒュンッ!!』 最後にバイメンが言うと、神様は姿を消した。 「………大聖が実は神様だったかぁ。そりゃあ、自分のこと話せるわけないわよね。」 「………悪かったな。黙っていて。」 「あ、別にそれを隠してたことを責める気はないわよ。  目の前に神様がいる。確かに…人間や生物が何するかわからないわけだし。」 バイメンが姿を消した後のこと。2人は海に続く道をゆっくり歩いていた。 バイメンが教えてくれたことを振り返りながら、エアリーは大聖の方を見つめる。 一方の大聖は、そんなエアリーの視線を気にしながら前を歩く。 大聖が宮守を殺そうとしたのは、大蛇や竜を許すまじき存在である神というため。 しかし、あくまで大聖はバイメンに言われて行動に移しただけなのかもしれない。 そこで、エアリーは大聖に少し聞いてみる。 「ねぇ、大聖。」 「…なんだ?」 「その、竜や大蛇の退治っていうのは、あなた自身も真に望んでること?」 「………え?」 エアリーが控えめに聞くと、大聖も顔をあげエアリーの方を見た。 「何を言ってるんだ?俺は老師様の指示をもとに、行動に移しただけだぞ。」 「だから、“指示をもとに”動いただけなんでしょ?  …あなたがそれをするにあたっての気持ちとか、どうなの?  ほら…、勿論それをしたかったとか、本当はやりたくなかった、とか…。」 「………俺は………。」 エアリーにそう言われて、大聖は口を閉ざし、黙り込む。 ………答えられなかった。エアリーにとっての鍛冶や店の経営のように、 自分にとって、それは本当にやりたいことだったのだろうか? エアリーが指摘した通り、バイメンに言われたままそれを行っただけなのでは? …心の中で自問自答する。 バイメンはこの面を気にしてか、『自分の道を歩めばいい。』と言った。 その自分の道というのが、自分にとって一体なんなのか。 答えが出ず、エアリーの問いに答えられないと悩んでいたとき、 笑うエアリーに、背中を『ポンッ!』と軽く叩かれた。 「今答えが出ないんなら、これから探していけばいいでしょ!  あなたの時間がどれくらいあるのか、わたしは知らないけど、  この旅を続けてる中…、いえ、旅が終わった後だっていいじゃない?」 「………今答えを言う必要はないのか?」 「わからないことの答えが、いきなり出るわけないわよ!  わたしだって、自分が本当にやりたいって思ってることに気付くのに、数年かかったわ!」 「そんなにかかったのか?」 「そんなもんよ!それに気付くのが遅くなっても後悔はしてないわ。  何かを始めるのに、早い遅いはないっていうしね!  大聖、あなたなら尚更そうなんじゃないの?」 「………。」 少し目を見開く大聖に、エアリーが笑いかけながら話した。 その台詞と様子に、大聖は拍子抜けたという力の抜けた顔をする。 ………自分のやりたいことを、探す、か………。 「まぁ…、今すぐに答えを出す必要もないか…。」 「そうよ!そういうのは長い目で見てかないと!  焦ったってそれに自分自身が気付けないわよ!」 考えることをやめたかのように笑えば、大聖は歩き出す。 それに同意という様子で、エアリーも同じように笑えば、 大聖を追いかけるように歩き出した。 ………海には、まだ辿りつきそうにもない。 しかし、2人は金斗雲に乗って、早く到着しようということはしなかった。 後に騒動の解決に間に合わなくなるという懸念もあったが、 たまには、自分達の進みたいように進んでもいいだろうと考え、2人は歩き続けた。 金斗雲に乗っているときはじっくり見られない、 回りの景色や川の波の音、風の音、草が擦れ合う音に耳を傾ける。 それらは、落ち着きと安らぎを与えてくれた。 風景を楽しみながら、ゆっくり歩くというもの悪くはないな………。 青い空に見守られながら、2人は海を目指して、ただ歩いていった。 「バイメンが待ってるでしょうけど、このままのんびり行きましょうか?」 「………そうだな。」 エアリーがクスリと笑えば、大聖も頷いた。 ………。 「━━━━━おぉ!やっと来たか。流石にちょいと待ちくたびれてしまったわい。」 「ごめんなさーい。ちょっとのんびりし過ぎちゃったかしら?」 長い時間を日にちをかけ、やっと海が目の前にある三角州にたどり着いた。 2人がくたびれたながらも満喫したという、ご満悦の笑みでやってこれば、 そんな2人をずっと待っていたバイメンが、困ったように笑った。 しかし、バイメンは特にこの2人を急がしていたわけではないし、 何よりこの2人の進みたいように進ませたいという気持ちから、 バイメンは待ち続けることを選んだのである。 困ったように笑うバイメンに、エアリーも笑ったまま頭を下げた。 その姿勢に、大聖とバイメンは密かに関心する。 2人が神とその関係者であるとわかっていることもあり、 エアリーは…少し無礼だったかと態度を見直したのだった。 「何、無事にここまで来てくれたのならそれで構わぬ。  お前さん達、海に入る準備は出来ておるか?」 「えぇ、わたしは大丈夫よ。大聖は?」 「俺も平気だ。」 これから海の中に入れる魔法をかけようとしたところで、 バイメンはそれぞれに状態を聞いた。 バイメンの問いかけに、2人は落ち着いた様子で大丈夫だと頷く。 …神とはいっても、バイメンは海の神ではないためだ。 海に入れるようにすることは出来ても、海を切り開く水のない空間を生み出すことは出来ない。 いや…、もしかしたら出来るのかもしれないが…。 「よし、ならちょっとの間、目を瞑っておれ。」 「うん。」 大丈夫といった2人の目の前に降り立ち、バイメンは両手をかざす。 自分の指示に従い、両目を閉じた2人の胸板に、自身の手のひらを近付け、 「………むんっ!!」 『━━━━━カァアッ!!!』 掛け声とともに、青白い光を放ち、それぞれの身体を包む。 バイメンの力を纏った2人は、声と音に驚いてたじろぐ。 「はっはっは!何、そんなに驚かんでもええ。…目をあけてもよいぞ。」 「………。」 声をあげて笑いながら言うのを聞き、2人は同時に目を開けた。 …バイメンにかけられた魔法とは、一体なんなのだろうか。 それを一度探ろうと、エアリーと大聖は自分の身体をキョロキョロと眺め始めた。 まるで、よく見えない物を探す子供のような様に、 バイメンは微笑ましそうに見ながら、こう付け足す。 「何をしたかというと、魔法でお前さん達を包んだんじゃよ。  …自分自身で見ることは出来んが、他人の変化は目で見える。  お互い、相手の身体を見てみるといいぞ。」 「包んだ…?大聖、ちょっとわたしを見てくれる?」 「ん?…あ、あぁ。」 バイメンの補足説明を聞き、エアリーが不思議そうな顔で大聖に投げかける。 それを受けた大聖に、それを無視する理由などない。 大聖も、素直にエアリーの様子の変化を観察してみる。 …すると、エアリーの身体の包むように気泡のようなものが存在していた。 同様に、エアリーから見た大聖にも同じようなものに包まれていた。 「決して割れることのない気泡で、お前さん達を包んだんじゃ。  その気泡の中にいれば、水の中にいても陸と同様に呼吸が出来る!…ということじゃ。」 「なら、この気泡の中に空気や酸素が含まれてるってこと?」 「そういうことじゃな。あらゆる衝撃で割れることはない。ただ…。」 「ただ…、何?」 「効果切れには要注意じゃ。魔法は永遠に効果を持続するものではないからの。」 「そうか…。効果が切れたらどうなるんだ?」 大聖が聞くと、バイメンが一変して真剣な顔をする。 「生身の状態で、水の中へ放り出されることになろうぞ。  効果切れが近づくと、気泡の色が薄くなるはずじゃ。それを見てよく考えるんじゃ。  生身で水の中で放り出されるということがどういうことかは…、言うまでもないな?」 注意を払うように足せば、2人も緊張した様子になり、コクリと頷く。 「ちなみに、効果はだいたいどれくらい持続するの?」 「そうじゃのう………。」 「………バイメン?」 「………………。」 無暗に深いところまで泳ぎ、そうならないために。 エアリーが最も知っておくべき点としてバイメンに聞くと、 ………バイメンは黙り込んでしまった。 その後、何かを思い出そうとするかのように、ブツブツと独りごとを話す。 「持続時間は…。3時間、6時間、半日分、いや…1日分………じゃったかのう?」 「………おい、ちょっと待て。まさか老師様…、  肝心なところを忘れたんじゃないだろうな。」 「………すまんっ!!そのまさかじゃっ!!!」 ………うろ覚えの果てに、大まかな数字さえ特定出来なかったらしく、 両手を『パンッ!!』と合わせて申し訳なさそうに謝るバイメンを見て、 大聖は…、深いため息をついた。エアリーは微苦笑を浮かべながら、 半分開き直るかのように、励ます。 「まっ…、まぁ、効果が切れそうになる兆しはあるんだし、  それをよく見ればいいんじゃない?  海には海の人達がいるんだし、大丈夫でしょうっ…!」 「だがなぁ…。3時間、6時間、12時間、そして24時間じゃあ…、  持続時間が違いすぎるぞ。これが特定出来なければ、  行動範囲も定めづらいことのうえない…。」 「そ、そんなに心配しなくても!確かに海は広いけど、  事情を話したうえで海の人達に手を貸してもらえば、なるようになるわよ!」 「そ…そうじゃ!ずばり、なるようになる!」 「2人ともなぁ…。(俺はともかく、一番心配なのはエアリーだな…。)  海中散歩が気軽に出来る乗り物もない俺達が、  万が一深い場所まで行くことになったらどうする!?  そこまでたどり着いた後、戻ってこれないかもしれないんだぞ!?」 「大聖〜!気にしすぎだって〜!」 エアリーがなんとか励まし、半ばやけくそでバイメンも頷くのを見て、 大聖は呆れた様子で、顔をしかめて注意をした。 「それに!今回は海!俺でもなんとかしきれないかもしれないぞ!」 「もう〜、1人で背負おうとすることなんてないのに…。」 「他者に頼るのと、1人でなんとかしたがるというのは、  男女間における心理の違いの1つ、じゃなぁ…。」 だんだん擦違い始めたエアリーと大聖の主張に、 バイメンも興味深いという様子で眺めていた。 しかし、せっかく魔法をかけたのに中々海に入らず、言い争いをしている2人にイライラ死始めたのか、 バイメンの顔はだんだん怒りのものに変わっていった。 そんな気持ちを抱きながらも、2人の背中を押し、叱るように言う。 「これ!こう言い争っておるうちに、魔法の持続時間はだんだん減っとるんじゃぞ!  それを忘れてはおらんじゃろうな?言い争っておる暇があるなら━━━━━!」 「うっ………、それもそうか………。」 「ほら、いくら考えても、行動しなきゃ魔法が勿体ないわよ…。」 バイメンに軽く怒鳴られると、ようやく自覚出来たのか2人は言い争いをやめた。 そう…、バイメンのかけた魔法は、もう効果を発動させている。 海を目の前にして、こんなところで言い争っていないで早く入れと言わんばかりに、 「━━━━━はよぅいけぇっ!!!」 『ドンッ!!!』 「きゃっ!!?」「うあっ!!?」 2人の背中を強く押して、そのまま海に落としてしまった………。 2人は、『はい』『いいえ』の選択をし、返答する間もなく、 海の中へとまっさかさまに落ちていった。 2人が落ちた衝動で、『ザバァアンッ!!!』と大きな音を立てた頃。 バイメンはハッとして、2人が既に落ちてしまった三角州の陸地を眺める。 「………やれやれ、またやってしまったわい。こうなると、どうもいかんのう………。」 『せっかく魔法をかけてやったのに、入らず無駄な言い争いをするとはどういうことじゃ!!』 2人が言い争いを始めた時点で、口にはしなかったがこのような文句が生まれた。 しかし、怒り任せにとった態度というのは、 後になって…深く後悔してしまうというのは、ことのことだろうか。 2人がいなくなった三角州の陸地に座り、バイメンは2人が落ちた波紋の後を眺めた━━━━━。 「━━━━━もう、何なのよいきなり突き落としてっ!!!」 「自動自得、と言えばそうだが…。どうも老師様のあの一面は苦手だな…。」 一方、バイメンによって海に突き落とされた2人。 バイメンの行動にエアリーは騒ぎ、大聖は深い溜息を吐いた。 ある程度下方向へ落ちて、そう言い合ったところで、2人はハッと顔を上げる。 顔をあげて周囲を見渡せば、周りは綺麗な青色をしていた。 ………そう、2人が落とされた場所は、海。 そして、陸の者である自分達が、海の中で会話をした………。 これは………。 「これが………、バイメンの魔法っ………!!?」 「………だろうな………!!」 水中で、陸にいたときのように普通に話せたことに気付き、 2人は一緒に驚きの表情を浮かべた。 今、自分達は海の中に入り、話している。 これが、今ある紛れもない真実であることを知ると、飛び上がりそうなくらい嬉しくなった。 入ることの出来ない海に、今…自分達は入っている。 「大聖っ━━━━━!」 「………。」 エアリーが嬉しそうな顔を呼ぶと、大聖も目を輝かせてジッと見つめた。 「よしっ!!それじゃあ海の街に向かってしゅっぱーつっ!!」 「あっ、おいっ!!待ってくれっ!!」 エアリーが海の世界の街に向かって泳ぎ出すと、 大聖もその後を追いかけ、泳ぎ始めた━━━━━。 ━━━━━なんだか、変な方々がお見えになったようですわね。 でも不思議、あのお方達は、あたくしがずっと待っているあの人となんだか似ておりますわ。 ………それでも、あたくしの心はあの人の者。 変な方々はいらっしゃったというのに、あの人はまだ帰って来て下さらないの? あぁ…。このシェリー、あなたがおられない毎日は不安でたまりませんわ………。 ねぇ、プロンジェ………。 早く…、早く帰ってきて………━━━━━。 『D-03 ひとめ』に続く。